スコットランドのパイプバンドの音楽が月のデータセンターへ向かう理由

今年後半、オックスフォードシャー州バンベリーを拠点とするレイドロー記念パイプバンドの音楽が月へ送信され、月面のデータセンターに保存される。この計画はLonestar Data Holdingsが同バンドと協力して開発したもので、ミッションの文化的ペイロードとなる。そのミッションの主目的はまったく実用的なものであり、重要なデータを地球外に保存し、地上のサーバーインフラを脅かす脆弱性から保護できることを実証することにある。

Lonestar Data Holdingsは、宇宙事業の起業家クリス・ストット氏によって設立された。同氏はここ数年、地政学的な不安定性、サイバー戦争、自然災害、そして世界のデータを数千棟の建物に収容することに伴う物理的な集中リスクが存在する地球上では、デジタルインフラの安全性を保証できないと主張してきた。同社の解決策は、物理的な攻撃や自然災害が問題にならない場所、すなわち月にデータセンターを置くことだ。

同社は2025年初頭のIntuitive Machines IM-2ミッションで、月面に最初のデータセンターを展開した。このミッションは技術的な問題に悩まされたものの、データを月に保存し、地球からアクセスできることを実証することに成功した。同社は現在、地球と月の間の重力安定領域であるL1ラグランジュ点を拠点に、シスルナー空間(地球と月の間の宇宙空間)でデータ保存衛星のコンステレーションを計画している。L1点は地球から約30万キロメートル(18万6000マイル)の距離にある。Lonestarは衛星設計会社Sidus Spaceと1億2000万ドルの契約を結び、2026年1月にはこのプロジェクトを進めるため660万ドルの新規資金を調達した。

パイプバンドとの縁は、スコットランド系の家系出身であるストット氏が、オックスフォード大学の教授でレイドロー記念パイプバンドのメンバーでもあるデビッド・カー氏に異例の提案を持ちかけたことから始まった。ストット氏の会社は音楽を録音して月のデータセンターに送信する計画を進めており、同氏はバンドが参加したいかどうかを尋ねた。

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バンドの名前はデビッド・レイドローにちなんで付けられた。彼は第一次世界大戦中、銃火の中を負傷兵を安全な場所へ運びながら、その間ずっとパイプを吹き続けた功績によりビクトリア十字章を授与されたパイパーである。歴史上、ビクトリア十字章を受章したパイパーはわずか3人だけで、その一人が彼だ。息子のジョン・レイドローも戦争の英雄として従軍し、その後バンベリーに定住してバグパイプを教え、今なお父の名を冠するバンドを創設した。

音楽が月でどのように保存されるかという技術的な詳細は、概念としては単純だ。バンドの演奏の録音がデジタル化され、圧縮された音声ファイルとしてデータセンターに送信される。データセンター自体は、放射線、月の昼と夜の間の摂氏200度超(華氏392度)の温度変化、そして宇宙の真空に耐えるよう強化されたソリッドステートストレージで構成されている。温度を和らげる大気がないため、月面は日光が当たると摂氏約120度(華氏248度)まで熱せられ、夜間は氷点下170度(氷点下274度)まで下がる。すべての部品は、ひび割れやアウトガス、データの完全性の喪失なしにこのサイクルを生き延びなければならない。電力は2週間続く月の昼の間は太陽光パネルから供給され、2週間続く夜の間はバッテリーに頼る。地球への通信は商業地上局を経由した無線周波数リンクを使用し、信号の遅延は片道およそ2.5秒だ。

Lonestarコンステレーションの最初の衛星は2027年初頭に打ち上げられる予定だ。パイプバンドの音楽は、軌道インフラが整った後、その年の後半に送信される予定である。それは地球の彼方に送られた他の文化的ペイロードに加わることになる。ボイジャー探査機のゴールデンレコード、Celestisの追悼サービスによって月に散布された人間の遺骨、そして国際宇宙ステーションのサーバーに保存されている数千時間に及ぶデジタルコンテンツである。

月面データ保存の経済性はまだ実証されていない。データを月に送信するコストは、1ギガバイトあたり地上施設に保存する場合よりも大幅に高く、商業用月通信ネットワークで利用可能な帯域幅も限られている。Lonestarのビジネスモデルが対象とする顧客は、絶対的な物理的セキュリティという要件に比べればコストは二の次という人たちだ。具体的には、いかなる国の管轄外にも災害復旧サイトを必要とする金融機関、地上での紛争を生き延びなければならない政府のアーカイブ、そして一箇所に保存して失うリスクを冒すにはあまりに貴重な科学データセットである。月に保存されたデータは差し押さえられることも、ハリケーンや地震で破壊されることも、いかなるサイバー攻撃も、25万キロメートル(15万5000マイル)の宇宙空間を越える無線通信という問題をまず解決しない限り、そこに到達することはできない。

ストット氏は、パイプバンドのプロジェクトについて意図的にユーモラスな表現で語り、月面に響き渡るバグパイプの音が異星人の抑止力になるかもしれないと示唆している。この冗談は、可能になりつつあることの現実的な変化を指し示している。宇宙空間でのデータ保存は、10年足らずの間に構想から実証、そして商業運用へと移行した。パイプバンドの音楽はミッションの目的ではないが、厳密には必要ではないものを運べるほどインフラが現実のものになった証しである。

雅子 訳

References

BBC News. Banbury bagpipes: the first defense against alien invaders? July 30, 2026.

Data Center Dynamics. Lunar data center firm Lonestar Data raises $6.6m, swaps CEO. January 14, 2026.

Lonestar Data Holdings. Company profile and mission information. lonestar.space.

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