
DeepSeekは7月31日、ひっそりと廉価モデルをエージェント向けベンチマークのリーダーへと変えた。同日、新しいチェックポイント「V4-Flash-0731」をHugging Faceに公開し、V4-Flash APIをパブリックベータに移行した。アーキテクチャには一切手が加えられておらず、向上はすべてポストトレーニングサイクルによるものだが、この小型モデルは現在、DeepSeekが公開したすべてのエージェント向けベンチマークで同社自身のPro旗艦モデルを上回っている。
見出しとなる結果は、プレビュービルドからの顕著な跳躍を示している。開発者がエージェント型コーディングタスクに用いる指標であるTerminal Bench 2.1では、V4-Flash-0731は82.7を記録し、プレビュー版の61.8から上昇してV4-Proの72.1を上回った。ソフトウェアエンジニアリングのベンチマークであるDeepSWEでは、モデルは1回のリフレッシュで7.3から54.4へと改善した。セキュリティエージェントの性能を試すCybergymは38.7から76.7へ上昇した。改善は的を絞ったもののように見える。同じポストトレーニングサイクルにより、このモデルは複数のエージェント向けテストでGLM-5.2やAnthropicのOpus-4.8と広く互角の成績を残しつつ、推論時の規模ははるかに小さいままだ。
こうした成果には注意点が伴う。ベンチマークの数値はベンダー側の報告によるもので、DeepSeek社内のHarnessフレームワークの最小モードを用いて生成された。このフレームワークは公開されておらず、独立した評価では結果が異なる可能性がある。さらに2つのテストセット(DSBench-FullStackとDSBench-Hard)はDeepSeek内部のものだ。同社自身のドキュメントも、エージェントのスコアは使用するハーネスに影響されやすいと注意を促している。
開発者にとって今回のリリースが興味深いのは価格設定だ。APIはキャッシュミス時に入力トークン100万個あたり0.14ドル、キャッシュヒット時には100万個あたり0.0028ドル、出力トークンは100万個あたり0.28ドルで、V4-Proの出力単価のおよそ3分の1にあたる。モデルは2840億パラメータの混合専門家(MoE)設計を維持し、トークンごとに130億パラメータが活性化し、コンテキストウィンドウは100万トークン、高推論モードでは最大38万4000出力トークンに対応する。チェックポイントにはDeepSeekの投機的復号モジュール「DSpark」が同梱されており、同社によると、スループットを一致させたサーバー構成ではユーザーあたりの生成が60〜85%高速になるという。
APIのアップグレード経路は意図的に手間のかからないものになっている。プレビューから切り替える開発者は、クライアントコード内のモデル識別子を変更するだけでよい。新しいビルドはResponses API形式をネイティブにサポートし、Codexにも対応しており、DeepSeekがトラフィックの主流になると見込むエージェント型およびコーディングのワークロードに照準を合わせている。V4-ProのAPIとアプリモデルは今回のリリースでは更新されていない。
ホスト型APIを完全に避けたいチーム向けに、重みはMITライセンスでゲートなしに公開されており、オンプレミス展開が可能だ。ただし、その道のりは簡単ではない。フル精度でのサービス提供には、DeepSeekのvLLM参照構成で4ノードのGB300クラスターが必要となる。一方、積極的な量子化により要件はRAMとVRAMの合計およそ110 GBまで引き下げられ、Unslothのロスレス8ビット版は約162 GB、3ビット版は約103 GBとなる。
戦略的なシグナルはモデルラダーだ。DeepSeekは日常的なエージェント型およびコーディングのトラフィックを3分の1の価格でFlashに誘導しつつ、最も困難な推論ワークロードはProのために取っておいている。今回のリフレッシュにより、スタートアップや独立系開発者は、同等のプロプライエタリモデルに比べわずかなコストで旗艦級に近いエージェント能力を手に入れられる。
雅子 訳
出典: DeepSeek Upgrades DeepSeek-V4-Flash-0731 with Major Agentic and Coding Gains(MarkTechPost、2026年7月31日)、DeepSeek-V4-Flash-0731 model card(Hugging Face)、DeepSeek puts V4-Flash API into public beta(TechNode、2026年7月31日)、DeepSeek API pricing(DeepSeek)

