
国家運輸安全委員会(NTSB)の予備報告書によると、5月にニューメキシコ州の山腹に墜落した小型の医療搬送機は、当時この地域一帯で米軍がGPS信号を妨害していたため、衛星航法を失っていた。NTSBの調査が軍によるGPS妨害を事故の一因として公に指摘したのは初めてのことだ。
この便は2026年5月14日夜、患者を迎えるためルイドソーを玄関口とする空港へ向けてロズウェル・エアセンターを離陸した。離陸直後、乗員は管制官に対し、航法が失われたと無線で連絡した。付近を飛行していたほか3機も同じ問題を報告した。その数分後、機体はキャピタン山原生地域に衝突し、パイロット2人とフライトナース2人が死亡した。衝突の衝撃で山火事が発生し、最終的に約1万2000ヘクタール(3万エーカー)が焼失した。調査関係者は、乗員らがこの地域で妨害が行われるとの警告を受けていたことに言及している。
その夜の一連の出来事は特に注目を集めている。GPS喪失の報告を受けた管制官は、電子戦訓練が長年にわたり施設の外にも影響を及ぼしてきた陸軍の試験場であるホワイトサンズ・ミサイル実験場の担当者に連絡し、妨害試験の中止を求めた。陸軍は一時中断したものの、管制官が医療搬送機の乗員が目的地を目視確認したと伝えた後、試験を再開した。その約5分後に機体は墜落した。予備報告書は、乗員が妨害の中断や再開を知らされていたかどうかについては述べていない。
ホワイトサンズは何年もの間、GPSを利用できない環境での試験の中心拠点となっており、その影響は今回の事故よりずっと以前から記録されている。過去の事例では、同実験場の訓練が480キロメートル(300マイル)以上離れた場所の航法に混乱を引き起こし、機体のコース逸脱、制限空域への進入、飛行中の航法機能喪失などにつながった。NASAの航空安全報告システムに寄せられた報告は、こうした機能喪失は事故が起きてもおかしくない状況であると繰り返し警告していた。2024年に管制官が提出した報告は、この状況が続けばいずれ誰かがけがを負うだろうと述べていた。調査に関する報道で引用された匿名の情報筋によると、内部で「ストップ・ブザー」と呼ばれる試験中断は、1回につき500万〜1000万ドルの費用がかかるとされている。
機体には2つの独立した航法システムが搭載されており、妨害下での両システムの挙動は、この問題の重大さを物語っている。FAA(連邦航空局)認定の主要GPS受信機は、航空管制に機体の位置を送信するADS-Bトランスポンダーに位置データを供給していた。機体が影響を受ける区域に入ると、離陸時には数秒ごとに送信されていたトランスポンダーの位置情報の更新間隔は、約1分に1回まで延びた。これは受信機が衛星信号を捉え続けるのに苦労していたことを示す兆候だ。イリジウムの衛星ネットワークを経由する副次的な追跡システムは、欧州のガリレオ衛星群も利用できたためかもしれないが、より安定して送信を続けた。ただし、そのデータは操縦室ではなく地上の監視装置に送られた。
衛星航法の専門家らは、より広範な脆弱性を指摘している。認証済みの航空用受信機の多くは今も従来型のGPS L1信号にほぼ全面的に依存している一方、民生用機器は一般的にGPSにガリレオ、GLONASS、北斗(BeiDou)を組み合わせており、機能を失わせることがはるかに難しい。FAAは新しいL5信号への対応を追加する計画だが、このアップグレードは、軍によるGPS地上管制ネットワークの近代化が完了することが前提となる。
より大きな傾向は決して安心できるものではない。国際航空運送協会(IATA)によると、GPS妨害を経験した航空機の数は2021年から2024年にかけて2倍になった。また、2026年の米イラン紛争の開始から2日間で、ペルシャ湾の650隻以上の商船がスプーフィング(なりまし)信号の影響を受けた。ホワイトサンズでの妨害訓練は墜落後も続いており、その後数カ月間には少なくとも12日分の試験が予定されている。NTSBの最終的な原因特定では、機体、アビオニクス、飛行データ、気象、航空管制通信が調査される予定で、通常は最長2年を要する。
雅子 訳
Sources: Military jamming disrupted GPS on plane that crashed in New Mexico (AP News, Aug 4, 2026); US military GPS jamming exercise suspected of contributing to civilian plane crash in New Mexico (Tom’s Hardware, Aug 5, 2026); NTSB Investigates GPS Jamming in Fatal New Mexico Medevac Crash (AirGuide, Jul 23, 2026); A Civilian Plane Crashed in New Mexico. Was the Military’s Tech to Blame? (Wired, 2026)

