
10月に迫るブラジル大統領選挙は、ワシントンと北京の代理戦争の様相を呈しており、ドナルド・トランプ氏の関税政策は自陣営に不利に働いている可能性がある。
投開票まで3カ月を切った時点での世論調査では、北京寄りの左派である現職のルイス・イナシオ・ルラ・ダ・シルバ大統領と、親ワシントン派の挑戦者が互角に競り合っている。しかし、その選挙戦の力学はホワイトハウスの想定とは異なるものだ。
トランプ氏は7月、ボルソナロ前大統領のクーデター未遂裁判を理由に、ブラジル産品への50%関税を発動した。この措置はブラジル政府に圧力をかける試みとみられた。ところが実際には、ルラ氏に強力なナショナリスト的結束の呼び水を与える結果となった。ブラジル大統領は関税に対して強硬姿勢を取り、支持率は上昇した。
ワシントン・ポスト紙によれば、この関税は現在、トランプ氏が勝利を望む候補者の不利となり、ルラ氏に有利な形で選挙結果を左右する恐れがある。
ワシントンの支援を受けるブラジルの挑戦者は、同国を米国により緊密に連携させる政策綱領で十分な支持を得るのに苦戦している。一方ルラ氏は、ブラジルの最大の貿易相手国である中国との関係を深めている。今週の習近平国家主席との電話会談で、習氏は中国がブラジルの主権と独立の擁護、および外部干渉への反対を支持すると述べた。これはトランプ氏の関税圧力をほのめかした発言である。
重要なのは、この選挙の行方だ。ブラジルはラテンアメリカ最大の経済大国であり、BRICS圏における主要なプレーヤーである。ルラ氏が勝利すれば、ブラジルの中国およびグローバル・サウスへの傾斜が固まる。一方、挑戦者が勝利すれば、中国の影響力が急速に拡大する同地域において、ワシントンが足がかりを得ることになる。
中国はこの選挙戦を注視している。国営メディアは今回の選挙を、主権か米国の圧力への服従かの選択として位置づけている。隣国ペルーのチャンカイ港は、中国が建設したメガポートで、すでに南米の貿易ルートを変容させつつあり、米国に抵抗する地域パートナーに北京が何を提供できるかを示している。
トランプ氏の関税戦略はブラジルを罰するためのものだった。しかし、結果は意図とは全く逆に、ルラ氏に二期目をもたらし、ブラジルをさらに北京の軌道へと押し込むものとなるかもしれない。
雅子 訳

