
【キーウ=本社】ウクライナの首都キーウや他の都市で17日、数千人の市民が抗議デモを行った。ゼレンスキー大統領が国防相のムイハイロ・フェドロフ氏(35)を解任したことに抗議するもの。フェドロフ氏はウクライナの無人機(ドローン)計画を戦争で最も有効な兵器へと変えた近代化推進者として知られる。
デモ参加者は「フェドロフに手を出すな」「勝利を妨害するな」などのプラカードを掲げた。政府庁舎前では「恥を知れ」のコールが響いた。2022年2月のロシアによる本格侵攻開始以降、ウクライナで起きた2回目の大規模反政府デモであり、反応は生々しいものとなった。
フェドロフ氏の国防相就任から6カ月。同氏は省の資金を給与から軍事投資へと振り向け、武器調達の透明性を推進し、衛星通信会社「スターリンク」のイーロン・マスク最高経営責任者(CEO)を個人的に説得してロシアの通信アクセスを遮断させた。しかし最大の成果はドローン計画だった。同計画について、情報当局者は現在、ロシア兵が最前線で20~30分しか生存できない主な要因だと指摘する。
ゼレンスキー氏は、ウクライナ軍総司令官オレクサンドル・シルスキー氏との「溝の拡大」を理由にフェドロフ氏を解任したと説明。「両者が問題を解決できないなら、私が解決せざるを得ないことを示したまでだ」と語った。
フェドロフ氏は沈黙を守らず、シルスキー氏との対立を認め、同氏が戦場で成果を上げていたドローン改革を含む全ての最近の取り組みを妨害したと非難した。
「戦争は完全に変わった。シルスキー氏が司令官である現状では、個人的にどう戦争に勝てるのか分からない」とフェドロフ氏は述べた。
英フィナンシャル・タイムズ紙によると、フェドロフ氏はまた、有力な政治・軍事関係者の希望する企業に有利な調達契約を拒否したことで、彼らの怒りを買っていた。ウクライナ戦争は数十億ドル規模の産業であり、契約を掌握する者こそが真の権力を持つ。フェドロフ氏は汚職の一掃を試みた。その結果、敵を作った。
ウクライナ空軍副司令官のパブロ・イェリザロフ大佐は抗議の意を示して辞任し、フェドロフ氏の解任を「国防能力にとって大きな悪」と表現。キーウの防空を弱体化させ、さらなる死傷者を出すと警告した。
ゼレンスキー氏は後任を速やかに指名した。国防相代行にはウクライナ保安局(SBU)長官代行のイェブヘン・フマラ少将が就く。議会はまた、ウクライナ国営エネルギー会社ナフトガズの前トップであるセルギー・コレツキー氏を新首相に承認した。ゼレンスキー氏は、ロシアによる電力網攻撃に対抗するにはコレツキー氏のエネルギー専門知識が必要だと主張している。
今回が1年以内で2度目の内閣改造となる。1度目は戦時中の刷新、ソ連時代の遺産や汚職にまみれた当局者の排除として位置づけられた。今回は様相が異なる。文民の国防指導部と軍司令部との対立のように見え、文民側が敗れた。
タイミングは最悪と言わざるを得ない。ウクライナは4年半で140万人の兵士を失ったロシア軍に対抗しているが、その優位は革新、ドローン、AI(人工知能)による標的設定、フェドロフ氏が推進した機動的な調達に依存している。彼を保安局の将官と交代させることは、ウクライナがその優位を維持できるかという疑問を提起する。
17日の抗議デモは政権を打倒するようなものではなかった。しかし、現実のものだった。4年半にわたって戦争状態にある国で、人々は小さなことで街頭に出たりしない。
フェドロフ氏の解任は、ウクライナの戦争指導部における亀裂を露呈させた。ゼレンスキー氏は意見の相違を管理していると述べる。デモ参加者は彼が勝利を妨害していると主張する。どちらが正しいかは戦争が決める。
確かなことはこれだ。ウクライナは、自らを生かし続けてきた技術的優位を失う余裕はない。そして、その優位を築いた人物を戦争の真っただ中で解任することは、ゼレンスキー氏自身の支持者の一部でさえ黙って受け入れる覚悟のない賭けである。
雅子 訳

