
「弾丸銀河団」の新研究、暗黒物質の存在に異議
注目画像: [X線ガスをピンク色、重力レンズ質量を青色で示した弾丸銀河団の合成画像;クレジット:NASA/CXC/STScI/ESO]
ボン大学が主導する新たな研究により、現代宇宙論で最も議論を呼んでいる問題の一つ、暗黒物質は実在するのかという問いが再び注目を集めている。ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の新たな観測データを用いて、研究チームは、暗黒物質の最も強力な観測的証拠と長らく考えられてきた有名な「弾丸銀河団」が、この捉えどころのない物質を引き合いに出さずとも説明可能だと主張する。
弾丸銀河団は、約37億光年離れた二つの銀河団の巨大な衝突であり、その発見以来、暗黒物質仮説の礎となってきた。観測結果は、衝突による高温のX線ガスが銀河団の銀河よりも遅れて進む一方、総質量の指標である重力レンズ信号はガスではなく銀河に追従することを示した。この乖離は、目に見えず衝突も起こさない暗黒物質のハローが銀河を取り囲み、衝突をまっすぐに通り抜ける一方、ガスは摩擦によって減速された証拠と解釈されてきた。
7月1日に『Physical Review D』に掲載された新研究は、その解釈に異議を唱える。
研究の内容
ボン大学ヘルムホルツ放射線・原子核物理学研究所の張東氏が率いるチームは、JWSTの新たな測光データを用いて、弾丸銀河団の中心部にある三つの最も明るい銀河の総バリオン質量を再推定した。重要なのは、彼らが銀河全体初期質量関数(IGIMF)理論を適用したことである。この理論は、初期型銀河が、その後目に見えない恒星残骸(中性子星やブラックホール)に崩壊した大質量星をより高い割合で含むと予測する。
これらの残骸は、しばしば暗黒物質に帰せられるものと同一の重力を及ぼすが、通常のバリオン物質で構成されている。これらを考慮に入れることで、研究チームは、観測された重力レンズ効果が修正ニュートン力学(MOND)のみで説明でき、暗黒物質は不要であることを発見した。
「弾丸銀河団は実際、MONDのシナリオと特に一致している」と張氏は述べている。
標準モデルへの影響
暗黒物質の標準パラダイムの中でも、この研究は、弾丸銀河団で推定される暗黒物質の含有量をおよそ半分に減らす必要があることを示唆している。ボン大学とプラハ・カレル大学の共著者パベル・クロウパ氏は次のように述べている。「暗黒物質の存在を仮定する標準モデルでも、その想定される量は大幅に削減される必要があり、およそ半分となるだろう。」
論文の要旨は次のように述べている。「MONDの妥当性とは無関係に、暗黒物質モデルに関して新たな見解が浮上している。観測を説明するには、暗黒物質は従来予想されていたよりも少なくて済むようである。」
続く論争
弾丸銀河団は長年にわたり、MONDにとって最大の課題と考えられてきた。約40年前にモルデハイ・ミルグロムが提唱したMONDは、低加速度での重力を修正することで暗黒物質を代替する。批判派は、弾丸銀河団のレンズ質量とX線ガスの間のずれは、無衝突の暗黒物質なしでは説明できないと主張してきた。
ボン大の研究は、MONDのQUMOND定式化の下では、加速度が低い領域に幻の質量が現れ、拡散したガスではなく点状の銀河の近くに集中することで、観測されたずれを自然に生み出すと主張する。目に見えない恒星残骸からの追加質量と組み合わせることで、銀河団中心部の強レンズ信号は完全に説明される。
著者らは重要な限界を認めている。彼らのモデルの物理的実現可能性は、まだ確立されていない恒星残骸集団の空間分布と力学的挙動に依存している。また、解析は強レンズが作用する中心領域のみに焦点を当てており、弱レンズが優勢となるより大きな半径での整合性にはさらなる研究が必要である。
より広範な議論は未解決のままである。MONDは歴史的に、宇宙マイクロ波背景放射や宇宙の大規模構造など、宇宙規模の現象を説明するのに苦戦してきた。それでもなお、この研究は、暗黒物質の証明として長年引き合いに出されてきた弾丸銀河団が、これまで考えられていたほど決定的ではないことを示している。
「Baryonic mass budgets in the central regions of the Bullet Cluster and their consistency with strong lensing in MOND」と題された論文は、『Physical Review D』(DOI:10.1103/6zrp-q7c4)に掲載され、ポーツマス大学、延世大学、プラハ・カレル大学などの研究機関からの共著者が名を連ねている。
雅子 訳

