
最も興味深い超伝導材料は、同時に最も壊れやすい材料でもあり、長年にわたってその脆さゆえに実験室の中に閉じ込められてきた。原子1個分あるいは数個分の厚さしかないシート状の超伝導体は、電気抵抗なしで電流を流せるうえ、単位面積あたりに蓄えるエネルギーがバルク材料よりはるかに大きい。そのため、小型の量子デバイスを構成する部品として魅力的だ。問題は、空気に触れるとほぼ瞬時に酸化してしまうことである。研究者は大きな結晶から剥がした微小なフレークしか扱えず、実用的な回路を作ろうとする試みはすべて始まる前に失敗していた。マサチューセッツ工科大学(MIT)と共同研究機関のチームは今回、この制約を回避する方法を見つけた。8月5日にNatureに掲載された成果は、大気中で安定な二次元超伝導体への真に量産可能な道筋を示している。
今回対象となったのは二セレン化ニオブだ。ニオブ原子が密に詰まった単一の平面をセレン原子の平面が挟み込むという特徴的な内部構造を持つ単層超伝導体である。その魅力は運動インダクタンスにある。これは、材料が小さな面積にどれだけの誘導エネルギーを詰め込めるかを示す尺度だ。従来の量子回路では、エンジニアは大きな運動インダクタンスを実現するためにジョセフソン接合のアレイを鎖のように直列につなぎ合わせており、それは場所をとり回路を複雑にするものだった。本質的に高い運動インダクタンスを持つ薄膜があれば、それらのアレイをわずかな材料片に置き換え、回路を劇的に縮小できる。問題は、二セレン化ニオブが空気中であまりに速く劣化するため、実用的な規模での信頼性の高いデバイス作製が不可能だったことだ。そして標準的な対処法である、まず材料を成長させてから後から保護層で覆う方法も、被覆を施す前に酸化が始まってしまうため失敗していた。
MITの手法はその順序を逆転させる。研究チームはまず、もう一つの原子レベルの薄膜材料であるグラフェンの層を二酸化ケイ素基板上に堆積し、その下、グラフェンと基板の間の狭い隙間に二セレン化ニオブを成長させる。この隙間の幅は1ナノメートル未満で、2つの材料間の接着が弱いことに起因する。超伝導体はこの隙間の中でのみ成長する。基板は化学的前駆体を、結晶が形成できるだけの時間、留め置き、その上のグラフェンは前駆体が移動して途切れのない単一の層に融合することを可能にする。こうしてグラフェンは二つの役割を担う。成長の鋳型となることと、材料がすでに封入されているために完成した膜を大気から保護することだ。同じ手法は被覆層として六方晶窒化ホウ素を用いても機能し、研究者らがカプセル化エピタキシーと呼ぶこのメカニズムは、二セレン化ニオブを超えて、より広範な単層量子材料のファミリーに適用できる。
概念実証は見た目の美しい膜にとどまらない。チームは幅2.54 cm(1インチ)を超える滑らかで連続した二セレン化ニオブ膜を作製し、それを動作する超伝導マイクロ波回路に組み込んだ。厚さ数百ナノメートルの電極に原子レベルの薄膜を接続するには、酸化を伴わない転写技術と、真空チャンバー内での慎重な側壁エッチングが必要だった。このクリーンルームでの処理後も、材料は超伝導特性と高い運動インダクタンスを維持した。研究グループによれば、長期的にはこれにより、小型化された超伝導量子コンピューティングハードウェアや、通信あるいは宇宙論向けの超高感度量子センサーが実現する可能性がある。
この成果で最も重要なのは物理ではなく製造の物語だ。二セレン化ニオブの単層超伝導は何年も前から知られている。保護層を内蔵したウェハースケールの成長は、原理的には存在する材料と、製造ラインに投入できる材料との違いを生む。隠れた制約は依然として超伝導のもう一つの側面にある。すなわち、これらのデバイスは今も極低温での動作が必要であり、その見返りは室温でのコンピューティングではなく、より高密度で高性能な量子回路という形でもたらされる。それでもこの研究は、原子レベルの珍しい材料と工学的材料の間の頑固な溝を埋め、量子ハードウェア開発者に、壊れやすすぎると見限っていた材料ファミリーを再検討する理由を与えている。
雅子 訳
Sources: Researchers make air-stable, ultrathin superconductors, for more scalable quantum devices (MIT News, Aug 5, 2026); Scientists develop ultrathin superconductors that can help build more compact quantum devices (Interesting Engineering, Aug 6, 2026); Air-stable, ultrathin superconductors developed for more scalable quantum devices (Phys.org, Aug 5, 2026); MIT Creates Air-Stable Ultrathin Superconductors for Quantum Devices (TechExplorist, Aug 2026); Encapsulation epitaxy study (Nature, Aug 5, 2026)

