
老化は損傷によってではなく、不在によってその到来を知らせる。あらゆる病気や症状が現れるずっと前から、体は腱細胞、腎臓の細胞、筋肉を維持する幹細胞など、特定の細胞を静かに失い始める。ロックフェラー大学の曹俊越(ジュニエ・カオ)氏の研究室が作製し、2000万個以上のマウス細胞に基づく2つのアトラスは、この消失が個体ごとに再現可能な秩序に従って進むことを示している。同じ細胞種が同じ年齢で消え、その後には同じ免疫細胞集団が増殖する。老化が無作為な摩耗と損傷であれば、パターンは毎回異なるはずだ。しかし実際には異ならない。この再現性こそ、老化は破綻というよりプログラムであるという、古くから論争を呼んできた考えを裏付ける、これまでで最も有力な証拠である。
最初のアトラスはPanSciと名付けられ、2025年1月にサイエンス誌に発表された。これは13の臓器と脳にまたがる623の組織サンプルから採取した2000万個以上の単一核の遺伝子活性を解析したもので、サンプルは雌雄のバランスを取った野生型マウスを6、12、23か月齢で採取し、さらに免疫不全の系統を3、16か月齢で採取した。研究チームは、臓器特異的な主要細胞種を239種、脳内のものを31種、より細かい粒度のサブクラスターを3925種特定した。データセット全体を作製したのは1人の大学院生で、同研究室で開発された低コストのコンビナトリアルインデックス法EasySciを用いた。この規模の作業は通常であればコンソーシアムが必要になる。
この調査が明らかにしたのは、緩やかな衰えではなく、明確に区別される2つの段階だった。第一幕は、マウスの月齢およそ3〜12か月にわたる細胞の枯渇である。3〜6か月の間、細胞の喪失は代謝系と構造系の細胞、すなわち褐色脂肪細胞、速筋線維の核、腱細胞に集中する。6〜12か月の間には、喪失は全身の維持に携わる細胞群へと広がる。ナイーブT細胞、腸のマクロファージ、さらなる腱細胞、血管を包む細胞、そして腎臓と腸の複数の上皮細胞集団である。第二幕は12か月頃に始まり、流れが逆転する。細胞を失う代わりに、体は細胞を増やし始め、その増殖を支配するのは免疫系である。細胞傷害性T細胞、ガンマデルタT細胞、形質細胞、そして著者らが老化関連B細胞と呼ぶ細胞集団である。16か月頃の最後の波では、パトロール単球とさらなる老化関連B細胞が加わる。データセット全体では、174のサブクラスターが増殖し、56が枯渇した。2つの段階の時間的な重複はごくわずかだった。
曹氏は、これらのマウスの段階を人間の年代に当てはめている。最初の細胞喪失は20〜30代、維持細胞の枯渇は30〜40代、免疫細胞の増殖への移行は40〜50歳頃、老化した免疫細胞集団の本格的な増加は50代後半以降となる。2026年2月にサイエンス誌に発表された2番目のアトラスでは、研究チームはクロマチンアクセシビリティ、すなわち各細胞がどの遺伝子を読み取れるかを決めるDNAの物理的なパッケージングを、21のマウス組織にわたる1000万個以上の細胞で解析した。主要細胞種536種とサブタイプ1828種を識別し、最も劇的な変化の一部は早期に起こることを見いだした。筋肉のサテライト細胞、腱細胞、骨髄の免疫前駆細胞は、マウスの若年期に相当する1〜5か月齢の間に半数以上を失う。これらは体が後になって自分を修復するために最も必要とする細胞であり、そして最初に失われる細胞でもある。
クロマチンのデータは、秩序の存在を示す最も有力な論拠となる。測定できた調節領域134万1077か所のうち、27万9401か所が加齢に伴って変化し、特定の遺伝子の周辺での明確な減少と増加を含め、同じ領域がマウス間で同じ方向に変化した。変化は臓器間で同期しており、臓器がそれぞれ独立して衰えるのではなく、全身的なシグナルが存在することを示唆する。老化が確率的な分子損傷であれば、影響を受ける領域はマウスごとに異なるはずだ。しかしパターンは繰り返される。だからこそ曹氏は、老化を、調整されたシグナルによって駆動される体の細胞コミュニティの再編成であり、その指揮者の役割の最有力候補はサイトカインと呼ばれる分泌性の免疫分子であると説明している。
同じアトラスは、老化研究が長らく軽視してきた一つの側面も定量化している。それは性別である。細胞集団における老化関連の変化の約40パーセントがオスとメスで異なり、数万か所のクロマチン領域がどちらか一方の性のみで変化した。メスでは加齢に伴う免疫活性化がより広範囲に及んでおり、このパターンは自己免疫疾患が女性に多い理由の説明に役立つ可能性がある。この知見は相関的なものだが、検証可能な帰結を持つメカニズムを示唆している。
実用的な成果は標的の地図である。老化が特定の脆弱な細胞種の秩序だった喪失であるなら、早期に消える細胞は早期警告のマーカー候補となり、喪失を駆動するシグナルは薬の標的候補となる。曹氏の研究室はアトラスをepiage.netで公開しており、研究グループは個々の病気ではなく老化プロセスそのものを対象とした介入の研究をすでに進めている。主張は、老化を止められるということではない。主張はより控えめで、体の衰えには構造があり、その最初の出来事は消失であり、これほど内部の秩序を持つプロセスは、介入によって方向づけられる可能性があるというものだ。
アトラスはマウスのデータであり、マウスの老化は人間の老化ではない。秩序立った進行は、何が起こるかの記述であって、意図的なメカニズムの証明ではない。同じ再現可能な一連の現象は、進化したプログラムではなく二次的な影響の連鎖から生じる可能性もある。人間への当てはめ、すなわち以前の研究で観察された中年期頃の血液タンパク質シグネチャの急激な変化も、示唆的ではあっても決定的ではない。2つのアトラスが確立したのは、帰結を伴う一つの事実である。老化した体は均等に壊れるのではない。特定の部屋から先に空になり、その空になる順序は毎回同じなのである。
雅子 訳
Sources:
- Zhang, Z. et al. “A panoramic view of cell population dynamics in mammalian aging.” Science 387, eadn3949 (2025). DOI: 10.1126/science.adn3949. Preprint: bioRxiv 2024.03.01.583001.
- Lu, Z. et al. “Organism-wide cellular dynamics and epigenomic remodeling in mammalian aging.” Science 391, eadw6273 (2026). DOI: 10.1126/science.adw6273. Preprint: bioRxiv 2025.05.12.653376.
- Wickelgren, I. “Why Aging May Be a Program, Not a Breakdown.” Quanta Magazine, August 14, 2026.
- Rockefeller University. “Study reveals how unexpected shifts in cell populations are revising our understanding of the aging process” (December 11, 2024) and “Scientists map how aging reshapes cells across the entire mammalian body” (February 2026).
- Barnett, S.N. & Noseda, M. “Chromatin dynamics shape aging across organs.” Science 391, 869-870 (2026). DOI: 10.1126/science.aef5650.

