Y染色体の削除:1回のCRISPR切断で雄の細胞が雌のクローンに変わる

Y染色体は、哺乳類ゲノムの中で、雄を作るために不可欠だと多くの人が考えている唯一の部分である。日本の研究チームは今回、それが単純に削除できることを示した。8月4日に公開されたプレプリントで、理化学研究所、山梨大学、旭川医科大学の科学者らは、Y染色体のセントロメアを標的とした1回のCRISPR切断により、クローンマウスの胚が染色体全体を捨て去り、健康で生殖能力のある雌へと発生できることを報告している。この研究はまだ査読を受けていない。

この手法は、著者らがY-CUT(セントロメア標的型Cas9切断によるY染色体除去の意)と呼ぶもので、CRISPR-Cas9酵素と、Y染色体のセントロメアに狙いを定める1本のガイドRNAを用いる。セントロメアは、染色体を細胞の分裂機構に固定する反復DNAの密集領域である。マウスのY染色体セントロメアは反復単位が長く並んだ配列であり、ガイドRNAには切断できる標的部位が数百ある。セントロメアが損傷した染色体は、分裂の際にどちらの娘細胞にも引き込まれず、胚の最初の卵割の間に核から押し出され、微小核として排出されて、そこで破壊されるようだ。Y染色体を失った胚はX染色体を1本だけ持ち、XOとして知られる染色体構成となり、雌として発生する。

研究チームはこの手法をいくつかの段階で実証した。ICRマウス系統の受精卵では、胚をCas9とガイドRNAで処理すると雌だけの産子が生まれ、その雌の43パーセントがXOであることが、定量PCR、免疫染色、全ゲノムシークエンシングによって確認された。次はクローニングである。研究者らが雄のセルトリ細胞から核を除核卵へ移植してY-CUTを適用したところ、13匹の仔が誕生し、移植胚あたりの出生率は11パーセントだった。13匹のうち10匹、すなわち76.9パーセントが雌で、そのすべてがXOだった。雌と雄のクローンは成体まで成長し、それらを交配すると、核型が正常なXX雌を含む次世代が生まれた。

おそらく最も注目すべきは、この方法が生きた成体雄から採取した細胞でも機能したことだ。マウスの尾から採取した血液細胞を、編集を施さずに対照としてクローニングすると7匹の雄の仔が生まれ、Y-CUTを用いれば同じ手順で10匹の雌と1匹の雄が得られた。元のドナー雄はその後、自身の体細胞ゲノムに由来する雌クローンと交配し、子孫を残した。クローニング前に1日または1か月間凍結した細胞からも、数は少ないものの雌の仔が得られた。ゲノム検査では、雌クローンにおけるY染色体の完全な消失、染色体転座がないこと、予測されたオフターゲット部位の1パーセント未満での配列変化が確認され、それらの変化はすべて、タンパク質コード領域外の小さなモザイク変化だった。

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この概念的な転換に、保全生物学の研究者たちが注目している。これまで、標準的なクローニング法である体細胞核移植では、ドナーの性別を再現することしかできなかった。つまり、生き残った雄が1匹だけなら雄クローンしか、雌が1匹だけなら雌クローンしか生まれない。この制約は、ある種がわずか数個体にまで減ったときに重要になる。例えばクロアシイタチでは、雌が1腹に産む仔は少ないため、雄クローンのゲノムは通常、狭い一系統の子孫にしか受け継がれない。同じゲノムから作られた雌クローンなら、そのゲノムをはるかに多くの子孫へ伝えることができる。この研究には関与していない保全団体リバイブ・アンド・リストア(Revive & Restore)の主任科学者ベン・ノバク氏は、特に保全の分野で多くの用途が見込めるとMITテクノロジーレビューに語った。同じく関与していないハワイ大学のモニカ・ワード氏は、この偉業はこれまで達成されたことがなかったと述べた。唯一の前例は偶然のものだった。2009年、日本の研究者らがセルトリ細胞から作った27匹のクローンのうち、XOの雌を1匹だけ見つけた。

注意点は少なくなく、著者ら自身もそのほとんどを指摘している。雌クローンはXOであり、X染色体を1本しか持たないため、雄ドナーの正確な遺伝的コピーではない。さらに重要なのは、マウスでこの手法を成立させている生殖能力が、哺乳類全般には当てはまらないことだ。XOの雌はマウスでは生殖能力があり、他のげっ歯類でも可能性があるが、ヒトでは同じ染色体構成がターナー症候群であり、ほとんどの場合不妊を引き起こす。XOのウマも同様に不妊である。また、この手法には卵子が依然として必要だ。クローン胚は、自身または近縁種の雌から提供された除核卵母細胞の中で再構築しなければならない。関与する動物の数は少なく、各実験群につき2〜13匹程度で、クローンの長期的な健康状態や寿命に関するデータはない。

研究者たちはすでにY染色体の先を見据えている。著者の一人である山梨大学の石内崇氏は、生物学は長い間、生殖には両方の性別が必要だと想定してきたが、その想定は覆すことができるとMITテクノロジーレビューに語った。石内氏とともに研究を率いた理化学研究所の的場将悟氏は、この手法は、人工多能性幹細胞から卵子を作り出す最近の研究、例えば2匹の雄親からマウスが生まれた2023年のネイチャー誌の報告を補完するものだと説明した。チームはこの研究に関連する特許出願を行っている。さしあたり、実用的な可能性はより限定的だが現実的だ。1匹の雄げっ歯類のゲノムの遺伝的貢献を拡張する手段であり、染色体1本全体でさえも任意の装備として扱えるということを思い起こさせる。

雅子 訳

Disclosure: Based on a preprint (DOI: 10.64898/2026.08.03.742506) that has not undergone peer review.

Sources:

  • Matoba, S. et al. Initiating mammalian reproduction from a single male genome. bioRxiv preprint, posted August 4, 2026. DOI: 10.64898/2026.08.03.742506.
  • Hamzelou, J. Scientists just created female clones of male mice. MIT Technology Review, August 12, 2026. https://www.technologyreview.com/2026/08/12/1141768/scientists-just-created-female-clones-of-male-mice/
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