
ドナルド・トランプ大統領は、民間サイバーセキュリティ企業が外国の犯罪ネットワークに対する攻撃的作戦を実施することを認める国家安全保障大統領覚書に署名した。長年連邦政府にのみ委ねられてきた機能を民間の手に移すものだ。ブルームバーグが最初に報じたこの覚書は、国家安全調整センター(National Coordination Center)に対し、米国民、米国の企業、重要インフラを標的とする外国の国境を越えた犯罪組織に対して、審査を通過した米国企業がサイバー監視とサイバー効果作戦を実施できるプログラムの設立を指示している。
参加企業は連邦政府の管理と監督の下で活動する。監督は司法省と国土安全保障省が分担し、司法長官が指名する者と国土安全保障長官が指名する者の2人のプログラム執行責任者が、あらゆる作戦の承認前に調整を行わなければならない。両責任者は、人命の喪失や重傷を引き起こすと予想される作戦、または国際法上武力の行使もしくは武力攻撃に相当する行為を承認することはできない。
資格を得るには、企業は技術的熟達度、サイバー作戦実施の実績、施設の保安、審査済みの人員を証明しなければならない。また、少なくとも100万ドルの保証金またはエスクローを預託する必要があり、政府契約の遵守に失敗した場合は没収される。標的は、外国政府の制度的な一部ではなく、外国政府の指揮の下で全面的に運営されているわけでもない集団に限定され、明確な情報が別の事実を立証しない限り、いかなる犯罪集団も政府と無関係であると推定される。参加企業は、プログラムに関連する外部との契約関係をすべて開示しなければならない。運用手順は国土安全保障会議との協議を経て60日以内に最終決定され、各作戦にはプログラム執行責任者の書面による承認が必要となり、参加者全員の年次審査が行われる。
覚書は民間部門を十分に活用されていない資産と位置づけている。サイバー犯罪に対抗するため、民間部門の革新的な能力を含む国家権力のあらゆる手段を用いることを米国の政策として宣言し、参加企業が民間団体や連邦、州、地方、部族、準州の各機関と商業協定を結び、脅威情報を収集して対応作戦を調整センターに提案することを認めている。
今回の動きは、政権内で数カ月にわたって続いてきた一連の政策の集大成だ。ブルームバーグは12月、国家サイバー局長室(Office of the National Cyber Director)が攻撃的業務を民間企業に頼る準備を進めていると報じた。米国民を標的とするサイバー犯罪、詐欺、搾取的な手口を対象とした3月の大統領令が土台を築き、3月に発表された政権の国家サイバーセキュリティ戦略は、企業を動員して敵対者のネットワークを妨害する構想を示した。6月の覚書による国家安全システム委員会の再設置も、同じ取り組みの一環だった。
弁護士や研究者からは深刻な懸念が指摘されている。ジェナー・アンド・ブロック(Jenner & Block)の弁護士らはローンフェア(Lawfare)への寄稿で、現在の連邦の枠組みには民間企業による攻撃的サイバー作戦を認可するものはなく、コンピュータ詐欺・濫用法(Computer Fraud and Abuse Act)は州法や外国のハッキング関連法の寄せ集めとともに、まさにこの戦略が想定する行為を広範に犯罪化していると警告した。議会が行動を起こすまで、テクノロジー、防衛、サイバーセキュリティ分野の企業は現実の法的リスクに直面すると彼らは論じた。
帰属(アトリビューション)の問題がリスクをさらに増幅させる。コロンビア大学の上級サイバー紛争研究員ジェイソン・ヒーリー氏はサイバーセキュリティ・ダイブ(Cybersecurity Dive)に対し、どの犯罪集団が外国政府の支援を受けているかを判断するのが難しいことがあるため、こうした作戦を実施する者は誰でも大きな個人的な法的リスクを負うと述べた。ハンター・ストラテジー(Hunter Strategy)の研究開発担当副社長ジェイク・ウィリアムズ氏も同様の懸念を示した。請負業者が標的と政府の関係を読み違えた場合、連邦政府の承認を手にしていても、その作戦は地政学的な事件を引き起こすか、企業を米国法または外国法に基づく訴追にさらす可能性がある。
このプログラムは、説明責任をめぐるより深い問題を提起する。攻撃的サイバー作戦は伝統的に、機密の権限と議会の監督の下で活動する国家安全保障局(NSA)や米サイバー軍(US Cyber Command)などの機関の管轄だった。その業務を外部委託することは、たとえ司法省と国土安全保障省の監督の下であっても、サイバー空間で行動する権限を、連邦政府の運用担当者はほとんど負わない形で従業員が個人責任を負う企業に分散させることになる。重大な被害を引き起こす可能性のある作戦を除外することでリスクは縮小されるが、サイバー空間における妨害と損害の境界線を事前に引くのは難しい。
サイバーセキュリティ業界にとって、このプログラムは機会であると同時に罠でもある。攻撃能力を持つ企業に新たな収益源をもたらす一方で、従業員を、彼らを正当な標的とみなす外国政府の照準にさらすことになる。十分な数の企業がそのリスクを受け入れるかどうか、そして60日間の規則制定期間が業界と弁護士双方を満足させる手順を生み出すかどうかが、このプログラムが米国の政策の恒久的な手段となるのか、それとも短命に終わる実験となるのかを左右する。
雅子 訳
Sources: Trump Enlists Private Sector to Boost Cyber-Offensive Arsenal (Bloomberg, Aug 13, 2026); The Trump admin will start letting private firms launch international cyberattacks (The Verge, Aug 13, 2026); Presidential Memo Seeks to Expand Private Sector’s Role in Fighting Transnational Cybercrime (ExecutiveGov, Aug 13, 2026); Trump Admin Cyber Strategy Centers Private Sector in Offensive Cyber Operations (Lawfare, Mar 2026)

