シリコンに刻まれたアインシュタイン・タイル、繰り返しのないパターンで光をねじる

ハットは、存在してはならないはずの図形だ。2023年にアマチュアの幾何学愛好家デイビッド・スミス氏と共同研究者らによって発見されたこの図形は、13辺のポリカイトで、隙間も繰り返しもなく無限平面を敷き詰めることができる。半世紀にわたって解かれなかったいわゆるアインシュタイン問題を解いた最初の単一図形(モノタイル)だ。数学者たちはこの図形自体を研究対象としてきたが、物理学者たちは今度はこれをシリコンに刻み込み、繰り返し構造では決して生み出せないらせん性(カイラリティ)を伴う光の散乱という、通常の結晶にはできない現象を引き起こした。

実験は、東京大学生産技術研究所、NTT、東京科学大学の研究者らがNature Communications誌に報告したもので、ハットのタイル張りが特異な対称性を持つという観察から始まった。タイルの中心点が作る格子は完全な3回回転対称性を持つ一方で鏡映対称性を持たず、そのためカイラルであり、左右が本当に異なる。これは通常、鏡映対称性を備えるペンローズ・タイル張りのような従来の準結晶とは異なる点だ。

薄膜の穴とスクリーン上の光

研究チームはシリコン基板上に厚さ350 nm(13.8マイクロインチ)の窒化シリコン薄膜を作製し、電子ビームリソグラフィーを用いて、半径100 nm(3.9マイクロインチ)の円形の穴を約372,100個、直径約0.5 mm(0.02インチ)の領域に6世代のハット・タイル張りの形でパターン形成した。比較用に鏡像版も作製された。

構造物に緑色レーザーを垂直入射で照射すると、スクリーンに投影された反射回折パターンには鋭いブラッグピークが現れ、その位置はビームが当たる場所に依存しなかった。これは、この配列が準結晶のように長距離の準周期秩序を持つことの実験的確認だ。白色光の下では、パターンは鏡映対称性を持たない風車となり、単一の方向にねじれ、そのねじれ角は約15.5度と報告されている。鏡像のタイル張りでは風車のねじれの向きが反転し、この効果が構造そのものに由来することが確認された。

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このカイラリティは、分子の三次元的ならせん性ではなく、二次元的な構造特性(面内の鏡映対称性の欠如)だ。構造が鏡映対称性を欠くため、散乱場はそのらせん性を受け継ぎ、左円偏光と右円偏光は異なる散乱を示す。著者らは、鏡映対称性を持つ準結晶ではこの効果を生み出せないと論じている。

浴室の床からフォトニクスへ

アインシュタイン・タイルの名称は、ドイツ語で一つの石を意味する ein Stein に基づく駄洒落であり、アルベルト・アインシュタインとは無関係だ。この発見は、1974年に非周期的なタイル張りに2種類の図形を必要としたロジャー・ペンローズに始まる探求の集大成となった。スミス氏のハットは蜂の巣格子から作られ、単一の図形でこれを成し遂げた最初の例となった。その後、厳密にカイラルな単一タイルの変種であるスペクターが続いた。

今回の研究は、デバイスというよりも概念実証だ。偏光依存性は微妙なものと説明されており、実験で測定されたのはチップ内部を導波する光ではなく、表面から散乱した光だ。それでも、この実証により、カイラルな準周期構造は従来の準結晶を超えるプラットフォームとして確立され、偏光制御、光通信、光コンピューティングとの関連性が期待される。主研究者の森竹悠人氏は次に、このパターンをフォトニックチップの導波路内の光の制御に応用し、光通信・光コンピューティングデバイスを目指す計画だ。

数学的な基盤はJ. E. S. ソコラー氏によるものだ。同氏は2023年にハット・タイル張りの回折を解析的に計算し、その準周期性を確立した。今回の実験は、その構造をシリコン上で実現し、その光学的な特徴を読み取ったものだ。純粋数学のパズルへの答えとして始まった図形であるハットは、光の構成要素として第二の人生を見つけた。

雅子 訳

Sources

  • Moritake, Y., Takiguchi, M., Aihara, T., Notomi, M. “Chiral diffraction from aperiodic monotile structure.” Nature Communications 17: 6085 (2026). DOI: 10.1038/s41467-026-75023-7
  • arXiv:2506.07561 (preprint, June 2025)
  • EurekAlert press release, Institute of Industrial Science, University of Tokyo, July 29, 2026
  • Scientific American, July 29, 2026
  • Live Science, August 6, 2026
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