アストロサイトが隣接細胞を失うと、その核は欠損部へ歩み入る

成体の脳は、損傷に対して瘢痕で応答すると長らく考えられてきた。反応性の細胞が損傷組織の縁に積み重なって壁のように隔離し、失われた領域が取り戻されることはない、というのが定説だった。チューリッヒ大学の研究チームは今回、生きたマウスで異なる結果を観察した。大脳皮質の小さな領域が支持細胞を失うと、生き残った隣接細胞が分裂し、細長い細胞突起に沿って娘核を押し進め、瘢痕を形成することなく数週間のうちに細胞の乏しい領域を再び満たしたのだ。7月23日に『Nature Neuroscience』に掲載されたこの研究は、成体の脳ではこれまで一度も観察されたことのない修復メカニズムを報告している。

修復を行っているのはアストロサイト(星状膠細胞)だ。星形の支持細胞であるアストロサイトは脳のグリアネットワークを構成し、血流を制御し、老廃物を除去し、ニューロンの周囲の環境を整えている。損傷への応答を観察するため、研究チームはヒトの自己免疫疾患のモデルを用いた。視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)を引き起こすタイプの抗体、すなわちアストロサイト上のAQP4と呼ばれる水チャネルタンパク質を攻撃する抗体を、ヒト補体とともに成体マウスの体性感覚皮質に注入した。この処置によってアストロサイトの小さな集団が選択的に破壊された。その後、研究チームは頭蓋に設けた慢性的な観察窓を通して二光子顕微鏡を用い、数週間にわたってその後の経過を撮影した。

観察された現象は、複数の前提を一度に覆すものだった。病変の近くのアストロサイトは、単に腫れて境界を形成しただけではなかった。その約60%が60日以内に分裂したのに対し、対照領域では約1%だった。また、1個のアストロサイトが最大4個の娘細胞を生み出すこともあった。分裂は、分裂中のグリアがこれまで存在すると考えられていた血管の傍らの狭い帯状領域に限られていなかった。そして決定的なのは、娘細胞が留まらなかったことだ。著者らがヌクレオキネシスと呼ぶ状態では、娘核は母細胞の突起の共有細胞質を通して押し出され、跳躍的で、止まりながら進む様式で移動した。最高速度は毎時5.6μmに達し、時には最大9時間停止し、母細胞から10.5~113.5μm移動した。娘核の60%超が30μmを超えて移動した。移動中、核は楕円体に引き伸ばされ、停止すると丸い形を取り戻した。

細胞が本当に細胞質を共有しているという証拠は、光学顕微鏡と電子顕微鏡を組み合わせた相関顕微鏡法から得られた。母核と娘核が共通の細胞質の中に位置しており、娘細胞が細胞全体として移動していた可能性は否定された。娘細胞は機能的な意味でも独立していた。研究チームがレーザーで母細胞を破壊したところ、7個の娘細胞のうち6個(85.7%)が単独で生存した。約2週間で、病変は正常な密度のアストロサイトで完全に再び満たされ、ギャップジャンクションによる結合のネットワークも再構築された。著者らはこの結果を、アストロサイトのタイリングの回復と表現している。タイリングとは、各アストロサイトがそれぞれ固有の領域を占める継ぎ目のないモザイクのことだ。論文のヒト組織のデータでは、AQP4抗体陽性の疾患の患者7人から、病変の近くに同様の多核で細長い分裂中のアストロサイトが見つかった。ただし、核の移動そのものはヒトでは直接観察されていない。

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この発見の範囲は、「脳は自らを修復する」という言葉が示唆するよりも狭く、著者らもその点を明確にしている。再生するのはアストロサイトのネットワークであってニューロンではない。この研究では、新しいニューロンはどこにも報告されていない。また、このメカニズムがあらゆる種類の損傷で働くわけでもない。研究チームが、典型的なグリア瘢痕を生じる脳卒中に似た損傷を試したところ、再充填は失敗した。増殖中の境界部アストロサイトのうちヌクレオキネシスを行ったのはわずか17.6%で、移動はすべて短距離にとどまり、病変の中心部は再び満たされなかった。この修復経路は、境界が明確に画定され、瘢痕の境界がない病変を必要とするようだ。これは自己免疫性アストロサイト障害の初期に見られる状況だが、脳卒中には当てはまらない。この研究には行動学的・電気生理学的な測定も含まれておらず、再充填されたネットワークが機能を回復するかどうかは未検証のままである。著者らは、核移動の機能的意義はまだ明らかにされていないと述べている。

この観察が重要なのは、成熟したグリアが何をできるかというルールを書き換えるからだ。ヌクレオキネシス、すなわち核が細胞自身の細胞質の中を移動する現象は、これまで発生の過程でのみ知られていた。そこでは、幼若なニューロンやグリア前駆細胞が移動する。成体の大脳皮質で最も豊富な支持細胞が修復のためにこれを利用できるという事実は、成体の脳が、瘢痕形成を中心に据えた損傷モデルが隠してきた再生能力を保持していることを示唆する。アストロサイトの喪失が疾患の本質である視神経脊髄炎スペクトラム障害にとって、この発見は、脳自身の支持ネットワークが、始めたように見える仕事を完了させるよう支援できる可能性を示唆している。チューリッヒのチームが次に問うのは、移動した核が到着後に実際に何をするのか、そしてなぜ瘢痕の境界が核の移動を止めるのか、という点だ。

雅子 訳

Sources:

  • Herwerth, M., Wyss, M.T. et al. Focal astrocyte loss reveals nuclear translocation during lesion repopulation. Nature Neuroscience, July 23, 2026. DOI: 10.1038/s41593-026-02354-5.
  • University of Zurich press release, Brain Possesses Greater Self-Repair Capacity than Previously Assumed, August 10, 2026.
  • ScienceDaily, The Adult Brain Can Repair Itself Better Than Scientists Thought, August 12, 2026. https://www.sciencedaily.com/releases/2026/08/260812015158.htm
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